香港問題は「米中新冷戦」へと加速させる

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18年の米国による対中関税引き上げから、米中対立が激しさを増すなか、対立の舞台は香港へ。

中国政府が香港国家安全法を6月末にも制定し、これまでの一国二制度は形骸化しそうです。

 

今回の香港問題は「米中新冷戦」へと加速させることになります。

 

なぜなら、18年は貿易が争点でしたが、今回は「金融」が争点になっているからです。

IMFの発表によると中国経済が24年には経常赤字になるとされています。

また、今回のコロナ禍の影響で20年1月~4月は経常赤字になっています。

赤字を埋めるためには、海外からの資金を調達したり(資本収支)、海外の預金を取り崩したり(外貨準備)する必要があります。

ちなみに、国際収支(国の家計簿)の基軸通貨は米ドルです。

 

 

中国にとっての香港

中国にとって、金融の窓口になっているのが、香港です。

香港は、97年に英国から返還されてから、その後50年間は返還前の体制(資本主義)を維持することを約束されていたことから、「一国二制度」のもと、中国と欧米の資本移動の場所として成長しています。

どれくらいかというと、10年~18年の中国企業の資金調達のうち株式の73%、債券60%が香港からで、企業の新規株式公開(IPOによる資金調達額は世界1位となっています。

中国の関係者のなかには「上海や深センは香港の変わりはできない」と話している方もおり、中国にとって、香港は海外からの資金を調達するために重要な拠点です。

もちろん、成長している中国に投資できる窓口として欧米日にとっても、重要な窓口となっています。

 

 

米国内から中国企業を締め出す

米国は国内で中国企業が上場して資金調達することを認めていましたが、5月20日に規制を強化する法案を上院が可決しました。

米国公開会社監督委員会(PCAOB)が3年連続で会社を監査して外国政府の管理下にないと断定できない場合、号外企業の証券の上場は禁止されるというもので、実質的にアリババやバイドゥなどの上場が禁止される可能性が出てきています。

また、米国NASDAQも外国企業の上場基準を厳格化しており、米当局による定期的な会計調査を認めていない中国を念頭に置いてるとみられています。

中国企業は、GDP世界一である米国で資金調達をすることがさらに難しくなってきます。

 

 

中国の狙い

今回の香港国家安全法は、金融の窓口である香港を中国政府の監督下に置くことですが、これは「手段」であり、目的は、現在の基軸通貨である「米ドル」の影響を薄めること。

全人代で香港国家安全法が制定されることになりましたが、もう一つ大事なことはデジタル人民元の発行することを決めたことです。

人民元の裏付け、つまり中国経済のGDPを裏付けで、独自に決済ができる通貨が一部の新興国でも活用されることになれば、基軸通貨である米ドルを使う必要が徐々に薄れてきます。

他国への影響を強めるため、中国政府は、一帯一路政策の下、新興国に5Gのインフラ整備と中国企業によるサービス提供をセットで推し進めています。

 

 

米中新冷戦へ

現在、肥大化する中国に対して、米国ができる対抗策は、経済、資金移動、預金への規制です。

今回の件で、トランプ米大統領は、香港へのビザ優遇を止めることや中国本土並みの輸出規制をすると発言しています。また、国際銀行間通信協会(SWIFT)の利用停止も検討しているようです。また、米国の年金機構も中国への投資を制限し始めました。

 

基軸通貨については、数年で変わることがないですが、これまで絶対的な存在だったものを脅かす相手が出てきたことは確かです。

米国は威信をかけて、これを守ります。

当然、そこには大きな摩擦が発生し、新たな緊張状態「新冷戦」が始まることになりそうです。

 

 

 

傍観する欧州

コロナ禍で経済の落ち込みが激しい欧州。

経済の回復には、中国との貿易は鍵を握ります。

特に、欧州をけん引してきたドイツは、GDPの4割が輸出を占めており、対中貿易は重要です。

中国での自動車販売台数1位のフォルクスワーゲン(独)は、李克強首相の出身地に本拠地を持つJACに資本出資しており、中国と蜜月の関係を築いています。

対中政策では、米国と距離を置きそうですね。

また、今回、独仏首相が5000億ユーロのEU復興基金設立で合意しています。この基金の資金調達は、EU予算に基づき返済する計画とされており、EUが発行する債券になります。

債券を発行できることになると、これまでなかったEU全体を統括する財務省と発展していきそうです。

米中新冷戦のなか、独自の立場を築いていくことを模索しているようです。

 

 

日本にとっての「新冷戦」

先日の安倍首相の緊急事態宣言解除の記者会見で、米メディアの中でもタカ派である米紙ウォールストリートジャーナルの記者からの質問が重要でした。

記者「日本は米中のどっちにつくのか?」

安倍首相の解答は、日米は唯一の同盟国であり、その立場は今後も続く。一方で、中国が大国としての役割を果たしてくれることを期待すると述べています。

米中間の緊張状態が高まることは、安全保障の観点からすると現在よりもリスクが高まることは確かです。

一方で、米中間に入る立場で、かつGDP3位の経済国としては、メリットを享受することができそうです。

 

これからの日本像について、ある番組で日本美食株式会社のLu Dong代表は、「日本はアジアのスイスを目指すべきだ」と述べていました。

 

この番組は観光がテーマとなっていましたが、これは日本全体に言えることです。

そのためには、米中のデータを利用してどのようなモノやサービスを作っていくことや、また、安全保障として独立性を持つことも考える必要があります。

また、自然を大切にし、新たな観光資源を作っていくことも大切です。

今回の香港のことを考えると「金融センター」も狙えます。

これから、日本国内をもう一度見直し、良いところをアウトプットが重要になってきそうです。

まだまだ、チャンスは大いに増えてきそうです!

 

明るい未来につながる一歩を踏み出していきましょう!!

 

 

 

 

 

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